お父さんだと思っていたら
実はお母さんでした(笑)

さて、連想ゲームです。

あなたは「記憶」という言葉を聞いたとき
どんなことをイメージしますか?

 

なかなか人の名前や顔が覚えられない?
たくさんの英単語や公式を覚えること?
効率よくものごとを進めるための記憶術?
でしょうか?

それとも、はるか昔の懐かしい記憶?
いやいや、もう忘れてしまいたい恥ずかしい記憶
なかったことにしてしまいたい失敗の記憶や
ちょっと自慢したいような輝かしい記憶?

 

記憶力がいいとか、記憶法とか
記憶に残る、記憶喪失、記憶障害など
記憶すること、記憶できないことなどが
病気や障害のひとつになったり
人間は生きていく中で、いろいろな形で
記憶というものと関わって生きていますよね。

 

そして記憶のおもしろいところは
物事をそのまま記憶するだけでなく
自分の都合でデフォルメしたり
書き換わったり、消し去ってしまったり
自分の意思にかかわらず
そういうことが起こってしまうところ。

一般的に女性の方が男性より
過去のエピソードをよく覚えていたり
自分の都合で記憶を書き換えたりするのが
得意だといわれています。

 

女:「昔、あんなことあったよね~!」
男:「え・・・、そんなことあったっけ?」

男:「この映画、昔一緒に観たよね」
女:「・・・・それ、私じゃないよ・・・」で
修羅場になったことがある人もいるのでは?

 

これを読んでくれているあなたも
心当たること、何かあったりしますか?(笑)

 

今回は、私が「思い出の味 再現します」の中で
出会った面白いなぁと思った記憶に関する
エピソードをお話したいと思います。
 

あなたのご主人、またはお父さんは
普段、ご家庭で料理をする人ですか?
 
今どきは料理男子という言葉もある時代ですが
一昔前は「男子厨房に入らず」といい
自宅で本格的に料理をする男性は
少なかったのではないかと思います。

 

私たちの世代だと、
「すきやき」や「鍋料理」が夕飯のときは
父親が主導権をにぎっていたりしたものです。
 
今回ご紹介するクライアントさんのご家庭では、
おじいちゃん、おばあちゃんも同居していたので
法事など人がたくさん集まる時には
巻きずしをたくさん作っておいて
そんな時に皆で食べていたというお話でした。

また、もともとお父さんは料理が上手で
お母さんが病弱で、早くに亡くなっってしまった後、
お母さんに代わってお父さんが
食事を作ってくれていたということで
「お父さんが作ってくれた巻きずし」を
ご依頼いただきました。

 

このご依頼もいつもと同じように
ヒアリングと試作を経てご自宅へ。

さぁ、これからすし飯を炊こうと思ったら
なんとこちらのクライアントさんのお宅は
電気やガスの炊飯器ではなく
『お鍋』でご飯を炊いてらっしゃいました。

 

「え~、そんなの聞いてなかったよ~!^^;」と思いつつ
炊飯器自体を普段から使ってないということでしたので、
では鍋で炊きましょうとなりました。

普段から炊飯器を使っていると
あまり意識しないことかもしれませんが
すし飯を炊くときって、あとからお酢を入れる分
水を少なく炊きますよね?

炊飯器などは内釜に目印がありますが
普通のご飯よりもすし飯の方が低いところに
しるしが付いています。

だいたい普通のご飯でお米に対してお水は1:1.2
すし飯のときはお酢の分を差し引いて1:1くらいで
炊くことが多いと思います。
 

そういう説明をしてお鍋で水加減をして
ご飯を炊こうと思ったのですが
これだとあんまり水の量が少なくて
お米が硬くなったり、焦げたりするんじゃないか、
不安だとクライアントさんが言い始めました。

 

「マジか・・・どうするかなぁ・・・」
私自身がこのお鍋でご飯を炊いたことがないので
「どれくらいの仕上がりになるかもわからないし・・・・」

でも、これも1回目の試作だしね、ということで、
お米と水の割合は普通より多めの1:1.1で
炊いてみました。

 

炊き上がりは普通のご飯よりは硬めなものの
あわせ酢を入れて馴染ませても
若干水分量が多く、べちゃっとした印象。

巻きずしなので、海苔の上に乗せて広げると
なんとなく米粒もつぶれがちな気が・・・・

まぁ、でもとりあえず試食をしましょうと
巻きずしの具材を乗せて巻き込み、
一口大に切って、お皿に並べました。

こちらのクライアントさんの巻きずしは
いわゆる昔ながらの巻きずしで
今の大振りな具沢山なものとは違い
シンプルな具材で巻かれたものでした。

ご飯の酢加減や海苔の上のご飯の量、
中に入れる具材や分量など
見た目はOKの状態で
さてさて、当日1回目の試食です。

一切れを手に取り口に入れるまでも
「そうそう、こんな感じ! 懐かしいなぁ~」と
期待感たっぷりで、食べていただきました。

「うんうん、これ、これです~。」と
何度もうなずきながら、「おいしいです~」
「これが食べたかったの・・・」と涙ぐんで
言っていただけたのですが・・・・

 

私の頭の中では、
「え?どういうこと?」
これは、私がヒアリングの中で聞いたものでも
今まで試作してきたものと違うんですけど??

具はともかく、ご飯はべちゃってるし
料理上手だったと聞いていたお父さんが
こんなすし飯を作らないと思うんだけどなぁ~?

話がかみ合わない感じで
どうも居心地わるいような(もちろん料理のね)
感じで仕方ないので、もう一度
先ほどの経験を踏まえて
今度はお米と水の割合を1:1で作りなおしました。

あわせ酢や具材はそのままで、
すし飯の水加減だけ変更して
2回目の試作&試食。

 

私的には、こちらが正解のはず!と
期待を込めて、試食するクライアントさんを
見守っていました。

ですが、クライアントさんの反応はいまひとつ。
先ほどの思いを馳せるような表情や
「これ、これ」っといったような反応がない・・・

 

どういうことかわからず、クライアントさんに
「どうですか?」
「私が想像する巻きずしはこんな感じなのですが・・・」
と聞いてみました。

 

すると返ってきた答えは
「そうですね、お父さんの巻きずしはこんなだった」
と落ち着いた感じです。

 

「え?え?ちょっと待って、どういうこと?」
「お父さんの巻きずしが食べたかったんだよね?」
「じゃ、さっきの反応はどういうこと?」
と私は大混乱(笑)

よくよく聞くと、先ほどの巻きずしは
「お母さんが作ってくれた巻きずし」だったようです。

 
お母さんはお料理がちょっぴり苦手で、
彼女の作るすし飯は水分が多くて柔らかく、
巻きずしにしたときには、
少しお米がつぶれるくらいだったそうです。

 

そして、ここが面白いなぁと思ったのが
実際に食べてみるまで、彼女自身も
「料理上手なお父さんの巻きずし」を
もう一度食べたいと思っていたのに、
本当に食べてみたかったのは
「お母さんの巻きずし」だった!
ということでした。

その後、ご主人も帰宅され
子供さんも一緒に楽しく試食。

お父さんも、お母さんも亡くなられてから久しく
当時、子供さんも小さかったとのことで
お孫さんたちは覚えていないということでしたが
ご主人はもちろん記憶されていて
「へぇ~、懐かしいねぇ。」と
喜んで召し上がってくださいました。

記憶って頭の中に確かにあるのに
形がはっきり見えないもの。
 
でも、「これですか?」と照会すると
きちんと判別できるんですよね。

でも、今回はお父さんの料理が食べたいと
思っていたにもかかわらず、
本当に食べたかったのはお母さんの料理だった
と驚きの結果でしたが、これも終わってみれば
結果オーライ(笑)

 

こんな不思議なこともあるんですねぇ
私にとっては、すごくいい経験になりました!

 
クライアントさんにとっては一度に
思いもかけずお父さんとお母さんの両方の
巻きずしを食べれたということで、
それはそれで、いい思い出になったのではないかと
思っています(笑)

これも、このクライアントさんのお宅が
お鍋でご飯を炊いていたから出会えたこと。

 
亡くなったお母さんが導いてくれたのかなぁ
なんて思ったりもしています。
こんなちょっとびっくりなミラクルが起こることも多い
「思い出の味 再現します」のエピソードを
少しずつでも紹介できればと思っています。

あなたの周りの「思い出の味」の
エピソードもお聞かせいただければうれしいです。